2008年07月12日

ゲド戦記(映画)

 本来「TV」なんですがあえてBOOKカテゴリに(笑)。

 評判が案の定悪く、原作ファンの私としては出来るだけ避けていたジブリ版ゲド。それがたまたま一月ほど前に2〜4巻を再読したというこのタイミングでもって、たまたま新聞欄で今日放送があることを知ってしまったのと、やっぱり見てもいないのに批判はできまいということで我慢して見てみる事にしました。




 うん、やっぱり見るんじゃなかった。




 いやーヒドかったです。「陳腐」の一言ですね。出来るだけ冷静に、褒めるべきところがあったら褒めるつもりで見ていたんですがそんなもんありゃしねぇ。期待が最初から無かった分「想像してたよりいいじゃん」という感想になるかと思ったんですがそれもなし。以前mutaさんが「独特の雰囲気はある」という割と好意的なレビューをしておられたので、じゃあ見てみようかという気になったわけですが、私の個人的な印象で言うと、mutaさんの言われた「不思議な透明感とか、息が詰まるような閉塞感」は宮崎氏の仕事ではなくて単純に原作の世界観から来るものなのではないかと感じました。

 ストーリーは3巻と4巻のエピソードをあれこれとピックアップして余計なアレンジを加えて無理矢理こじつけまとめたもの。映画だから二時間にまとめねばならないとはいえ原作の設定を無かったことにしてるこの無理矢理さはひどい。それがまた一切合切無視してるわけじゃなくて要所要所で原作通りのセリフが出て来たり、一巻のオマージュと思えるような演出が出て来たりするから余計に腹立たしい。要するにゲド戦記ファンが作った同人誌のオリジナルストーリー(しかもつまんない)の映像化版ですな。それももの凄く金のかかった。そんな感じ。
 
 以下思い出せる程度でざっと細かいことを。テルーのやけどがあの程度なのは映倫上仕方ないのかもしれないがテナーはもっと色白のはずだろーとか、あと最初の方でゲドが「大賢人ともなると勝手に旅とかできない」ってなことを言うんですが、原作知らない人おいてけぼりですよあれ。後になってもう少し説明がなされるからまだいいですが、「ゲドは今ロークで大賢人って称号持ってる凄い人」っていう原作の設定知らないままあのシーン見ると、あのセリフはどっかのおっさんが自分の事を冗談で「大賢人」呼ばわりしてるように思えちゃいます。その他、特にむかつくことの大半は多分色んな場所で色んな人が言ってそうだから割愛。ただやっぱりあのくっつけ方はないなぁ。まぁ4巻までのエピソードを無理矢理くっつけてくれたおかげで今後続編が作られる心配が無いというのはとっても嬉しいですが。私が以前どっかで耳にしたのは○巻と○巻の間の外伝的な、映画オリジナルのストーリーとかって話だったんですが、まさか3巻と4巻の寄せ集めとは。これじゃあ原作ファンも原作者も翻訳者も泣くよ。

 何かのファンの人って、それに関するグッズだのなんだのを集めますよね。ゲド戦記が好きな人なら最初に出た岩波のハードカバー版、新しく出た全冊セット版、少年文庫版、表紙が違うってだけで揃えちゃう人もいるでしょう。そういう人にとってこの映画は「見ない」とか「(DVDを)買わない」ということそれ自体が一つの「グッズ(価値あるもの)」になるんじゃないかと思います。原作好き(でまだ未見)の方は一生見ない方がいいと思います。映画だけを見てしまった方は、あんなもんがゲド戦記だと思われては困りますから必ず1〜4巻を見て下さい(何故五巻と外伝まで読めと言わないかというと私がまだ未読だからです…)。

 あ、あと最後にもう一つ。どうせ映像化するならロークを映像化しろよ!!! 下手に映像化されたらそれはそれでやっぱり凄くむかつくかもしれないがあの魅力的な舞台設定を映像化しないというのはいかがなものかと。


 ウォーロック第四号「摩由璃の本棚」で見たこの表紙↓に一目惚れでした…。
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 誰?って思うかもしれませんがテルーとテナーです↑。
posted by SeireiK at 01:37| Comment(2) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私、ジブリ好きです(^^)

Posted by スマイル at 2008年07月12日 11:34
どうもはじめまして。ジブリ好きの方には不快な内容の記事だったかと思いますがコメントどうもありがとうございます。

せっかくコメント頂いたのでもう少し言わせて頂く事にしますと、結局このジブリ版のゲド戦記はまさにスマイルさんが一言でまとめられた「どうせ死んじゃうんだけど、寿命まで一生懸命生きれば?」という、ただそれだけの作品だと言う事です。あの重厚で玄妙極まりない素晴らしい文学作品であるゲド戦記が、そんな簡単な一言でまとめられてしまう陳腐な作品に堕してしまった、それが原作ファンには耐えられない、許しがたいことなんです。もちろん、一言で片付けてしまったスマイルさんに対して怒っているわけではありませんよ(誰が見ても一言で片付けられちゃうようなシロモノにしてしまったジブリと監督に怒っています)。そう感じさせるような余計で無駄なセリフが後半は特に多かったと思います。更に、原作を知らずに映画だけを見た人がスマイルさんのように、"ゲド戦記って「どうせ死んじゃうんだけど、寿命まで一生懸命生きれば?」っていうお話なんだね”という感想を単純に抱いてしまう、ゲド戦記がその程度のものとして認識されてしまう、長きに渡り世界中で愛されて来た「ゲド戦記』という作品に対しこれほど罪深いことはありません。未来永劫このジブリの罪業は世界中で批難されるでしょう。

だからこそ「あんなもんがゲド戦記だと思われては困りますから必ず1〜4巻を見て下さい」と書いたわけです。せめて1〜4巻のAmazonのレビューに目を通して頂ければと思います。この作品のことを「どうせ死んじゃうんだけど、寿命まで一生懸命生きれば?」という話である、と評している人は一人もおりません。三巻に込められたメッセージはもの凄く簡潔に言えば確かにそういったことではありますが、その三巻のレビューであっても、そうした評価をしている方はおられません。ジブリ版は、その部分のみ単純に取り上げてしまった作品であることがおわかり頂けるかと思います。

(「わかりやすさ」も映画の評価の一つであって、複雑な話を簡素化したからと言ってそれがすなわち映画として駄作だとは言えないということはもちろん承知しておりますが、この作品は少なくとも「ゲド戦記」の名を冠するには至らないと思います)
Posted by SeireiK at 2008年07月12日 18:26
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