2009年02月13日

『続巷説百物語』読了

 『おもしろ砂絵』の二重買い(ダブりとも言う)はショックでしたが、同じ日に『続巷説〜』のハードカバー版を特価300円で手にいれていたので心の傷が多少癒えました(笑)。

続巷説百物語 (文芸シリーズ)続巷説百物語 (文芸シリーズ)
京極 夏彦

角川書店 2001-05
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 古本で買ってる私が言うのもなんですが、やはりこのシリーズはハードカバー版を買わねばいけませんですねぇ。カバーの裏のオマケがなんとも贅沢です。

 以下感想。









 この『続』では、おぎんや治平の過去が明らかにされます。話としてはどれもこれも面白くて、ブ厚いながらも一気に読めてしまうのですが、最後の「老人火」は、うぅ…。

 このシリーズは他に『前巷説百物語』『後巷説百物語』が出ていますから、まだ未読なワタシとしては「おぎんや百介や又市が活躍する短編連作」だと思い込んでいたわけですよ。一番最初の『巷説百物語』と同様の話が、『続』『前』『後』全てにおいて展開されるのだろうと。映像化もされてますし、いってみれば水戸黄門パターンといいますか、「なめくじ長屋シリーズ(都築道夫)」のように大きく代わり映えしない個々の話がずっと続くんだろうなぁと。それだけに、おぎんや治平の過去が明らかにされていくだけでも意外だったのですが、更に、うぅ、「老人火」は、うぅぅ…。その前の「死神〜あるいは七人みさき〜」から六年後の話というので多少イヤな予感はしていたんですが…どうしてわざわざこんな話を単行本用に書き下ろすかなぁ京極さんよゥと泣きたい気分です。いや、実際泣きました。これは泣けますよ、えぇ。

(以下更にもうちょっとネタバレ)










 この『続』に収められている6話全てに山岡百介が関わっていることもあり、彼が又市たちとは違って「一般人」でもあることから、読者は読んでるうちにかなり彼に感情移入・同化してしまうと思われます。同じ京極夏彦氏の作品である「京極堂シリーズ」に登場する関口巽もまた似たような役割を持ったキャラクターですが、関口に比べると百介というのはもっとフラットな感じなのですよね。京極作品を読む人の中で関口に対して「あぁオレにそっくりだ」と思ったり彼に同調・同化しながら読んでいく人はおそらくそれほど多くないと思うんですが(笑)、百介の場合は割と同化しやすいって言うんですかね、「巷説」の舞台は江戸時代ということもあって、読者はそもそも「巷説」の世界においては異人なわけです。表の世界の住人でありながら又市のような裏の世界の住人と交わり、裏の世界を覗き見てしまう百介というのは、細かい性格なんかは読者と違ってる所ももちろんあるでしょうが、「江戸時代の世界を覗き見ている」読者とスタンスが似ていると思うのですよ。そういう意味で同化しやすいっていうか、又市たちと行動を共にして、彼らに振り回されたり驚かされたりという「翻弄のされ具合」が読者に近い温度差っていうんでしょうか。関口君と違ってあまり主体的に動かないというのもあるかもしれませんが(笑)。(いや、関口だってあんまり動かないけどさ)

 だからこそ、読者は(というか私は)「もっと又市たちの活躍を見たい、知りたい」「一緒に行動を共にしたい」と思うのですよ。この作品に限らず読書の際にはよくあることですが、読み進めるうちに段々と残りページが少なくなる淋しさだとか、読み終わってから連作の続編を心待ちにするとかですね、そーいうことがあるわけです。この世界の住人にもう一度逢いたい、彼らの活躍を見たい、という感情ですね。それが…

 この本の最終話、「老人火」でその読者の望みが断ち切られるのです。これは悲しい。百介と同じ心境に立たされるわけです。百介の悲しみがそのまま我々読者の悲しみになります。最後の二行にはホントに胸を打たれます。百介と違い読者は「前巷説〜」と「後巷説〜」を読むことで又市たちに再び逢えるわけですが、百介同様「二度と再び」彼らにあってはいけないのではないか、続編を読んではいけないのではないかという気にすらなってしまいますし、読んだとしてもおそらく「百介を伴った」冒険譚はもうそこにはないのです。
 …いや、未読なんで断言できませんが、多分そうでしょう。先に書いた通り、単純な連作短編だと思っていたのでものすご〜くショックです。うぅぅ。



 あ、ショックのせいで書き忘れてましたが、この作品に収められている6話、前作に収められている7話と時系列がバラバラなのです。時系列順にすると、「巷説〜」の4話の次が「続巷説〜」の4話、みたいな。今度読み返す時にはこれをちゃんと時系列順にして読んでみたいなぁと思ったんですが、自分で苦労してやらなくてもネットに情報がありそうだと思って調べてみたらありました(笑)。いやーネットは便利ですなぁ。どうもありがとうございます。


 千とチシロのよみとばし 巷説百物語・続巷説百物語
posted by SeireiK at 01:23| Comment(2) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
遅くなりましたが、トラックバック、恐れ入ります(^^
Posted by 千とちしろの主 at 2009年02月20日 17:39
どうも、わざわざコメントありがとうございます^^。
あ、岩波文庫版のカラマーゾフ読まれたんですね。私はどうしても途中で飽きてしまって、いまだに一巻が読破できません…。
Posted by SeireiK at 2009年02月21日 00:16
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