クエスト・ブック 魂の宝箱と12の呪文 (クエスト・ブック) 安田 均 社会思想社 1990-12 売り上げランキング : 820338 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
先日ふと、『魂の宝箱』をネタに「きままにタンタロン」みたいな濃い解説やってるサイト無いかな?と思って調べてみたんですよ。昔調べたときは単純に答え(の文章)が載ってるページが見つかったくらいでちょっと物足りなくて、あれから誰か新しく解説してたりしないかなぁ?と。そしたら「ダイタン放浪記」さんが今年に入ってからやってくれてまして、その解答&解説を見たら自分では気がつかなかったことがボロボロ出てきましたんで、あらためてこの本について自分でも語りたくなってきた、という次第です。
この本の兄弟的な立場にある存在(←だと私は勝手に思ってる)の『魔術師タンタロンの12の難題』はかなり面白い本です(でした)。で、少々ネタバレになりますがあの本は実は12の難題を解いた後の、13番目の謎と仕掛けがかなり凝った内容なんですね。あれに比べるとこの『魂の〜』はイマイチ面白くない本だと常々思っておりました。所謂「最終的な解答」は文章の形で表されるわけですが、文章自体は特に何の面白みもなく、頭文字を並べると違った文章が隠されている!というわけでもなさそうで、「解けたー!」という達成感に乏しいのです。ただ、タンタロンも普通に読んで12個の問題を解くだけでは作者の用意した真の大団円には気がつかないようになっていて、何故それを知ることが出来る(出来た)かと言うと雑誌『ウォーロック』で作者S・ジャクソンによる「ヒントと解法」が載っていたからなのです。同様に、私が気がつかなかっただけでこの『魂の〜』にも作者の隠した凄い秘密が「最終的な解答の更にその先」にあるのかな?というのが何年もずっと引っかかっていたわけです。なんせ『タンタロン』と違ってこちらは作者自らによる解答は(私の知る限り)どこにも発表されてはいませんので…。
で、話を戻して「ダイタン放浪記」さんの解説です。もうほとんどこれを見れば答えは一目瞭然ですので、私は更に補足…というか、「私はこう考える」みたいなことや他に気がついたこと等を記していきたいと思います。
1:冠
これは岩の模様が不自然だったので私はすぐ気がつきました。ただ、しっかり鏡を使って確認したりしなかったので「勇気の護符」か「冠」かどちらなのかちょっと悩みましたけど(苦笑)。
2:剣
初めて読んだ時「多分これだろうな」とは思ったんですが、全然剣の形になっていないのでイマイチ釈然としないものがありました。別ページの玉座にあるものは余りにも露骨すぎるので違うだろうとは思いましたが、これが解答というのは今でも納得が行きません。でもヒントに「天空(Heaven)」とあるので仕方ないのかなぁ…という感じです。よ〜〜〜〜く見ると柄っぽいものが見える気はしますが、ちょっとスマートさに欠ける問題です。
3:聖杯
これは素晴らしい! 私が初めて読んだ時は何故か「このページに聖杯がある」ということだけは見抜いていたみたいなんですが、この解法に気がついていたかは疑問です。ヒントの「反逆(Overturned)」も素晴らしい示し方だと思います。
4:兜
なんかそのまんま過ぎて微妙に納得しづらい感じです。ただ他に解答らしい解答が無い(兜があるとすればこのページ)のでこれで当たりでしょう。なお、本の最初に「用意するもの」として「ハサミ」が挙げられているのですが、結局ハサミを使わなければならないようなものは見当たりません。ハサミは、この兜を実際に作って試す場合に要るということなのかなぁ?と思いますが、でも正方形の紙があればハサミも要らないし…う〜む。
5:ほら貝
これまた素晴らしい! 初見の時は全くこの解法(&ヒント)に気がついてませんでした。なんとなく柱の右側の模様がほら貝っぽいなーと思ったので「ここに宝がある」という意味では当たってましたが、クモとクモを繋いで左右の柱をくっつけるとは!
6:銀の矢
これはすぐわかりました。ただ余りにもアバウトなカタチで示されていたので「これが正解なら他のも相当アバウトってことだよなぁ…???」と不安になりました(笑)。聖杯ページを偶然当てることができたのはこの「アバウトさ」のおかげだった気がします。
7:盾
これはヒントが露骨過ぎるのですぐわかりました。実際に鏡で試しませんでしたが、鏡を使えばなんとなくここが正解になりそうだなぁ、ということと、別ページにある「それっぽい答え」がよく見るとちゃんとフェイクであることを主張していたのでこれが解答だと確信できました。
8:魔術の書
扉がなんとなく本っぽいからこれかなぁ?と長年思っておりましたが、つい先日真の解答に気がつきました。これは後で図解入りで説明します。
9:鍵
これは「ダイタン放浪記」さんのおかげで初めて気がつきました(初見の時にもしっかりミスってました)。『タンタロン』の指輪と並ぶ素晴らしい問題&解答だと思います。気がついてみればちゃんと「玉座」とヒントが書かれているし、私はこの本ではこの問題が一番好きですね。
10:旗印
外す方が難しい問題(笑)。というか簡単過ぎてかえって不安爆発ですが、一問目(というか一ページ目)にあるものなのでこの優しさは意図的だろう、と納得できます。「こんな風にして絵の中に隠されてますよ」という最初の例題みたいな。
11:勇気の護符
非常に納得しかねるのがコレ。鍵や聖杯と比べるとスマートさが全く無く、他に答えがあるのではとどうしても勘ぐってしまいます。ただ、呪文から逆算して考えてもこのページに護符があることは確定ですし、「虫の迷路(Insect Maze)」というヒントがあるので…でもなぁ。ヒントと関連してなくても、オッサンがかぶってる冠の方がなんかそれっぽく見えるんですよねぇ。
12:弓
護符や剣と違って、「解答に該当するものがありすぎる」という意味でスマートではないものです(笑)。大体からして、最終ページの絵の中にだって弓っぽい部分が山ほどあるんですよね(爆)。王冠が見つけられなくても、いくらなんでも説明文と同じページに同じ宝は無いだろうってことでそれは除外出来ますが。
以下、下手くそな絵を使って解答を検証してみたいと思います。

ハイ、これが基本形。いや、私だって紙と鉛筆使えばもうちょっとマシな絵描けますよ。フリーハンド&トラックボール&Gimpで描いたにしては上出来だと思って下さい(笑)。胸と腰はこだわってちょっとだけ頑張ってみましたけど(爆)。
で、この絵の右下にある樹の枝なんですが↓

海外のサイト(現在サイトは無くなっているみたいですがインターネット・アーカイブに残っています)ではこれを解答としています。ヒントの「Mirrored Wood」はこれ(樹の枝)だというわけです(多分)。以下、鏡を置く場所がその海外解答と違いますが、例えばここ(赤線部分)に鏡を置くと↓

下から見るとこうなります↓。上記の海外サイトでは鏡を置くのはここではなくて本の下であると指摘しています。

次に、後ろにある大木の表面を這うディテール(ツタというかコブというか)を解とする意見。↓

ここを答えとすると、女性の手がここを指し示しているということにもなり非常に説得力があります。以下、またまた鏡を置く位置を描き間違えてしまいましたが、要するに↓みたいにこれらを鏡で二倍すれば

弓っぽく見えるわけです。「ダイタン放浪記」さんの解答ページで現在解答とされているものがコレで、鏡を置く位置は幹の上の方です。画像を見ても、非常に「弓」っぽいカタチをしていますしヒントの「Mirrored Wood」とも対応します。
しかし、私はあえて別の箇所、本の右上の部分↓が答えなんじゃないかと考えます。

既に何もしなくても弓っぽいんですが、ここ↓に鏡を置いて

右から見るとこうなります↓。

凄く微妙なんですが、うっすら見える白いスジが丁度弓の「弦(つる)」のように見えるんですよ。それと、全体的に色が白いというのもポイントです。ほとんどの宝物は見本の絵と、絵の中で見つかる宝の絵とで、色が統一されているんですよね。「白トネリコ」なだけにここかなぁ…という。あと、苦しいこじつけとしては、「木(トネリコ:Ash)」で出来ている弓の解答として同じ「木」が該当するのはちょっと怪しいかなと。王冠が崖の表面にあったように、全然違う素材(物質)に隠すのではないかなという気がします。
それと、ヒントに「霧(Mist)」があるということで、水系のもの=泉の水(で出来たドラゴン)の中に解答があるということではないか?と思ったんですが、他のヒントを考えてみるとヒントは全て後ろの部分であって前の部分はヒントではないんですよね(例:暗闇が・憎しみが・邪悪が・宝箱よ、等。いずれも呪文の一部として使用される言葉であってこの部分はヒントにはなっていない)。そう考えるとやはり後ろの大木の方が正解かなぁ…。
あと、ドラゴンの真ん中辺りにもそれっぽい箇所があります↓。

なんかこの辺に適当に鏡を置けば弓っぽくなりそうです。
8:魔術の書についての解説
魔術の書は、扉全体ではなく扉のかんぬき部分です。
で、例としてあげるものが非常に限定的でわかりにくいかもしれませんが、「頭の体操」ですとか、「小学○年生」などの学習雑誌、あるいは「TVマガジン」などの幼児向け雑誌のクイズのページなんかで、

↑こんな風に、ほそなが〜く伸びた文字が書いてあって「これは何と読むでしょう?」みたいな問題がありますでしょ。ありますよね? ね? これ↑は分かりやすく書きましたがもっと複雑な奴。
で、本をこうやって手にもって↓

本を水平にして、下から目線を本と平行にしてやって文字を見ると、文字が縮んで見えて、何と書いてあるのかわかる、という奴。魔術の書はこのトリックが使われているのですよ!

本を手に持って、かんぬきの部分を横から、目線を水平にして眺めるとかんぬきが縮んで見えて、魔術の書になります。表紙に書かれている文字や、ページにはさまれた蛇?だかなんだかまで表現されているようです。これに気がついたときは「おおぉ!」と唸りました。
最後に総括として。この本は、先に書いた通り最初は「タンタロンに比べるとイマイチつまらない」本だと思っておりました。しかし、この本は「最終的な目的(呪文の完成)」自体は実は真の目的ではなくて、呪文作成のためにやっている作業であるはずの「宝探し」を逆に呪文の方が助けているんですね。ある程度答えがわかると、「完成する呪文はこうなるはずだ…だとすると逆算して、この宝はここにあるはずだな」っていう。だからこの本はあくまで「呪文作成」は建前的な目的であって、そこに『タンタロン』のような快感を求めてはいけないんですね。あくまで一つ一つの宝を、納得行くカタチで見つけること、そこにこの本の楽しさがあります。
そして、この本は数人で「あれはこーだ、ここはこーだ、俺はこう考えた、いやそれは違うだろ」と、ワイワイやるのが楽しいのであって、一人で孤独にやっても面白みに欠けます。なんせ解答が明かされていないのですから、自分の考えが正しかったのかどうか他人と話し合って確認しないと「まぁなんとなくここなんだろ」と中途半端に終わってしまいます。この本を持っている人自体がかなり少なそうなので(苦笑)大多数の意見というのは知り得づらいものがありますが、機会あるごとに友人知人に貸しまくる(汚されるとイヤな人はとりあえず見せまくる)とかすると、これまでに見つからなかった解答なり伏線なりが新たに見つかるかもしれません。永久にモヤモヤしたものが残る分いつまででも楽しめる本ということで、実は結構面白い、よく出来た本であると今回評価を新たにしました。やはりS・ジャクソンと並ぶゲームブック界の雄、I・リビングストンだけのことはありました。
Casket of Souls Ian Livingstone / Iain McCaig
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