2010年03月14日

『百鬼夜行・陰』読了

 実は『有限と微小のパン』をなかなか読み進められなかったのはコイツに浮気していたせいもあったのです(苦笑)。年末からどっぷり森博嗣氏の文体に浸かってましたんで、久々に京極作品読んだら面白くて面白くて。

 この作品は、『姑獲鳥の夏』から始まる一連の「京極堂シリーズ」のサイドストーリーを集めた短編集なわけですが、一つ一つがちゃんと独立した怪奇小説仕立てになっているところが素晴らしい(読むまでは、ホントに単純に「サイドストーリー」なんだと思ってました)。これぞまさに妖怪小説、といった趣。

 京極作品を読んだ事の無い人で、なんとなく本の表紙やら京極氏本人の出で立ち(笑)やら巷の評判やらから氏の作品の内容を「ホラーチックでオカルティックな化け物小説」だと勘違いしている人(つまり私の母や姉のような人)っていると思うんですが、この『百鬼夜行』はまさにそういう方達が思い描いているとおりの京極作品像に仕上がっています(笑)。実際には京極堂シリーズはごく普通の(…でもないけどそれなりにきちんと論理の通った)ミステリ、推理小説であってホラー小説では無いのですけれどもね。

 この作品(群)を読んで改めて感じ入ったのは、小説家の凄さ、京極夏彦氏の凄さです。
 私はこれまでに『姑獲鳥の夏』〜『塗仏の宴・宴の始末』までの作品を全て読んでいます。でもって、鳥山石燕の『画図百鬼夜行全画集』も(文庫でですが)持っています。つまり、もし私に文才と想像力(世界構築力)さえあれば、この『百鬼夜行・陰』のような作品を書く事は可能なはずなのです。石燕の画集を眺め回して、個々の妖怪をシリーズのエピソードと結びつけて、サイドストーリーを書く。同人誌を書くような方であればこういったことは(京極氏のレベルに達するまでではなくとも)、個人でやられている方はたくさんいるでしょう。しかし、手元にある資料は全て同じであるにもかかわらず、私には作中人物のあの人と「けらけらおんな」を結びつけたりだとか、そういった発想が全く浮かばないのです。頑張れば「もくもくれん」をあの人に結びつけるくらいの発想は出来るかもしれませんが、だからといってこんなにしっかりしたストーリーの怪奇小説に仕上げることは出来ません。もう脱帽。

 更に、京極氏ならではの「活字による組あそび」も随所に見られます。

 どういうことかというと、

 いや、
 つまり、
 こういう、
 このような、
 こんな感じの、
 末尾が斜めにね、
 なるように文章を、
 考えて組んだりとか、
 物語中随所でこうした
 コトバ遊び的なというか
 活字を使った印象操作をね
 仕掛けてくるわけなんですよ。

 しかも、相変わらず絶対に活字が次のページにまたがらないように全ページ「。」で終わってますし。

 最近iPadの影響で電子書籍に関する話題をあちこちで耳にしますが、こういう↑作業にこだわる京極氏のような方にとっては、読み手が自由に文字サイズや行数を変える事が出来てしまう電子書籍という存在は非常にいやらしいものなのではないかと思われますね。
 少なくとも私は絶対、氏の作品は紙媒体でしか読みたくありません。

 (ただ、氏の作品は分厚いものが多いので電子書籍化が最も有り難い小説家の一人だったりもするところがまたなんとも…)



<参考>
 京極夏彦が出版業界の「構造改革」を促す
 InDesignで1,400ページを超える文庫本制作の納期を短縮、コストも削減



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posted by SeireiK at 12:06| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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