2010年03月27日

モーチュアリー(1)

THE MORTUARY

夢:モーチュアリー(死体置場・霊安室)のスラブ(石製の死体置台)に横たわっている。名前で覆われた柱。頭蓋骨の棚(ラック)。シンボル(記号)。女。ゴースト。

 奇妙なことに、モーチュアリーのスラブの上で私は目覚めた。起き上がる時、目の端が動くものを捉えた。宙に浮かぶ頭蓋骨。いや、それが話しかけた時私は悟った:宙に浮かぶ、話をする、頭蓋骨だ。

「よぅ、旦那。大丈夫かい? 死体遊びしてるのかい、それともダストマンたちの目をくらましてるのかい? アンタは確かに死んでると思ったんだけどなぁ」 私は混乱し、その髑髏の言うことに集中できなかった。

「何…? お前は誰だ?」

「う〜…“オイラ”が誰かって? “アンタ”から始めない? アンタは誰?」

「私は…わからない。思い出せない」私は、自分自身について何も覚えていないことに気づいた。

「自分の“名前”が思い出せない? へぇ。Well, 次にこの山(in this berg)で野宿する時には、飲み過ぎもほどほどにしときなよ(go easy on the bub)。オイラの名はモーテ。オイラもここに閉じ込められてんのさ」

「閉じ込められた?」

「おう(Yeah)、アンタがまだ足を動かす時間がなかった間に、ちょっとあってね:ドアは全部試したんだけど、この部屋は貞操帯よりがっちり閉まっちゃってんな」

私には順応する必要が、そして今どこにいるのかをこの骸骨から知る必要があった。

「私たちは閉じ込められているのか…どこだ?この場所は何なんだ?」

「“モーチュアリー”って呼ばれてるな。孕んだ蜘蛛の建築の魔法(architectural charm)がかけられてる、でっかくて黒い建物さ」 私は死んだということか? 記憶が無いのはそのためなのか?

「“モーチュアリー”? 何…私は死んだのか?」

「オイラが見る限りそうでもなさそうだけど。でも、アンタは体中傷だらけだけどな…まるでどっかのチンピラがナイフでペイントしたみたいだ。その傷つけた連中が誰にせよ、また止めを刺しに戻ってきたらますます楽しいことになりそうだね」

「傷? ひどいのか?」

「そーだなー(Well)…胸の傷は、そんなにひどくないな。でも背中のは…」 モーテは一息ついた。「なぁ、アンタ背中に刺青ギャラリーしょってるみたいだ。何か書いてあるよ…」

私は自分(の体)を見渡し、傷についての真相を悟った。肌がほとんど見えないほど傷で覆われている。腕には同様にタトゥーがある。夢で見たのと同じものだ。だが、背中の刺青とはどんなものだろう。

「背中に刺青が? 何と書いてあるんだ?」

「へぇ、指示でも書いてありそうなのかい…」 モーテは咳払いした。「ええと…こう書いてある…」

[お前はすでに Styx 川(三途の川)の水を樽で数杯は飲んできたような気分になっていることだろうが、自分自身の内面に意識を集中する(CENTER yourself)必要がある。持ち物の中にある、「日記」が暗闇を照らす光となるだろう。ファロド(PHAROD)が、何が起きたか残りの説明をしてくれる。彼が既に dead-book の中にいる(死んでいる)ことがなければ、の話だが]


「ファロド…? 他には何か?」
「Yeah、もうちょっとある…」 モーテは一息ついた。「ええと… 続いて…」

[日記をなくすな。さもないと結局また Styx 川に行くことになる。そして何があっても、自分が誰なのかということと、自分に何が起きたかということは誰にも話してはならぬ、さもないと話を聞いた者はお前をあっという間に火葬場への旅(死出の旅)へと送り込んでしまうだろう。私の言ったとおりにせよ:日記を読み、そしてファロドを探せ]


「背中が痛むのも無理はない;途方もない物語が彫ってあるな。その日記は、私が持っているはずのようだが…ここに寝かされている時近くにあったか?」

「いや…アンタはここに来たとき丸裸だったね。でもさ、体中に書かれてる日記だけでもう充分なんじゃないの」

この骸骨はたいした助けにはならなかった。

「ファロドについては何か?お前は彼を知っているのか?」

「オイラは誰も知らないよ…ってか知ってる人なんてほとんどいないし。でも(still)、チンピラの何人かはファロドの居場所くらい知ってるんじゃないの…う〜、一度ここを出てからの話だけど」

「どうやってここから「出る」んだ?」

「Well、ドアは全部閉まってるから、鍵が要るね。たぶん、この部屋の中にいる歩く死体(walking corpses)のうちの一人が持ってる」

「歩く死体?」 私は尋ねた。

「ああ、モーチュアリーの管理人は死体をお得な労働力として使ってるんだ。死体たちは石っころみてぇに鈍いんだけど、無害だし、アンタが攻撃したりしなけりゃ襲ってきたりはしない」 

殺すということを考えると、どういうわけか、不安な気分になった。

「他の方法は無いのか? 鍵のためだけに彼らを殺したくはないんだが」

「何だい、奴らの感情を害するとでも思ってるのかい? 奴らは死んでるんだぜ。だが、アンタが前向きに考えたい(want bright side)って言うんならさ:もし奴らを殺せば、少なくとも奴らは休めるってわけだ、奴らの保護者が再び奴らを起こして働かせに来るまではね」

「わかった…彼らの一人を倒して鍵を奪おう」

私は、感情無さげに部屋をうろついているゾンビの一人に近づいた。その死体は立ち止まり、うつろに私を眺めた。彼の額に「782」という数字が彫り込まれ、唇が縫い合わされているのがわかった。その体からはホルムアルデヒドのかすかな臭いが漂っていた。

「こいつはラッキーな請願者(petitioner)だね、旦那。見なよ…ヤツの手に鍵があるぜ」 モーテに言われるまでもなくわかった。そいつは左手に固く鍵を握りしめ、死後硬直した親指と人差し指を閉ざしていた。鍵を奪うためには、死体の手を切り取る必要があるだろう。

鍵を奪うには武器が必要だった。部屋の中の棚を調べ、医療用のメスを見つけた。モーテはずっと私につきまとっていたが、そこで口を挟んだ。

「よし、メス発見! さ、死体どものとこへ行くぞ…心配すんなって、オイラは離れていて、役に立つ戦い方をアドバイスしてあげるからさ」

「お前は助けてくれるんだろうよ、モーテ」

「助けてあ・げ・る よん。良き助言とは得難きものなり」  

私は突然、このぺちゃくちゃうるさい骸骨に腹が立った。

「私は、死体を攻撃するのを手伝えという意味で言ったんだが」

「オイラが? オイラは兵士じゃなくてロマンチストなんだ。邪魔になるだけだろって」

「私がこの死体を攻撃する時にはすぐそばにいた方がいいぞ。さもないとその次にこのメスを突き刺す相手はお前だからな」

「えー…わかったよ。手伝うって」 

私は再びゾンビに近づいた。


モーチュアリー(2)へ続く)



<メモ>

You can't be serious.
「まともじゃないな」と訳していたがイディオムとしての意味があったので変えた。

you putting the blinds on the Dusties?
「put a blindfold on 〜に目隠しをする」の変形として訳した。

go easy on the bub 「赤ん坊には優しく行こう」かなぁ?
berg 山???

They covered every visible bit of skin.
(ちょっと怪しい訳)

death grip 死後硬直として訳してみた。



<ちなみに>

 敬愛するちょこっとTormentさんにも冒頭部の訳があります。読み比べて訳出の違いをお楽しみ頂ければと思います。
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