電子書籍に関して、「そりゃやっぱり本ってモノは手に取って、紙をめくるのでないと嫌だ(ダメだ)よ」っていう意見がある。指先を通して伝わる本の重み、厚み、ページをめくる感覚、そういったものがないと味気ない、面白くない、というわけだ。
本好きな人には二種類あって、本に書かれた情報そのものにしか興味が無い人と、本という物体そのものが好きな人とが居るという。前者の場合平気で風呂で文庫本を読んだりする。私は限りなく後者に近い。本棚にびしっと本が(出版社別、作者別に)並んでいるのが嬉しかったり、京極夏彦氏に代表されるような「レンガ本」は、ただ「厚い」というだけで手に持つと顔がにやける。だから電子書籍に否定的な人の意見はよくわかる。
ただ、一昔前は衣類を手で洗っていたということを考えてみると、洗濯機なんてものが出て来た当時はきっと「そりゃ機械任せじゃなくて、洗濯は手でやらないとダメだ(嫌だ)」という意見が必ずあったはずなのだ。しかし今ではそんなことを言う人はまずいない。いたとしても日本においてはごく少数だろうと思われる。
衣類だけでなく、今では食器も食器洗い洗濯機(または洗濯乾燥機)で洗う時代である。これについても「やっぱり手でやらないと」という意見があるが、実際には手でやるより確実に洗え、しかも使う水の量に無駄が出ないという検証を以前TVでやっていた。食洗機に関してはまだ一般家庭への普及率がそれほどでもないと思うが、これもそのうち普及すれば「手でやらないといかん」なんて言う人は少数になるに違いない。
「洗う」ということと比べると本の場合は目に見える物体であり、前述のように「その物体それ自体」に対して愛を感じる人がいるわけなので一概に同様のことは言えないかもしれないが、しかし「自分の本棚が丸ごと全部iPadやKindleに収まる」というのはもの凄いことである。毎年増え続ける模型誌やこち亀のコミックスに悩まされることがなくなる。この便利さと省スペースの快適さに抗えなくなる人は増えるはずだ。
結局、普及してしまえば否定派の意見は遠く薄くなる。何でもそんなもんなんじゃないかと思う。
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