2006年08月06日

「アトポス」読了(4日の分)

 引き続き『アトポス』を読む。今日(5日)読了。はぁ〜つかれた。面倒だから4日の分にまとめて書いちゃえ。

 とりあえずネタバレ以前の話から。まず、スプラッター苦手な人(某ママ将軍さんとか)は避けた方が無難ですねこれは^^;。一見スプラッターな話題が実は「眩暈」同様ある社会的な面での批判に繋がっているところが島田ワールドなわけなんですが、そこへたどり着く前にダメな人は挫折する可能性が…。とはいえ、初めて島田荘司作品を読むのがこの本、って言う人はあまりいそうになく、島田ファン御手洗ファンならレオナ松崎の行く末が気になって頑張って絶対読むでしょうけど。あ、あと「水晶のピラミッド」でレオナファンになった人はちょっとショックかも。

 うーむ、やっぱりこれは冗長にすぎるかなというのが初読時と変わらぬ感想。ただ、それほどこういうスタイルを否定する気がなくなってきました。大人になったのね、私も。

 エース清水氏の影響で都築道夫とか読むと、推理小説における無駄な活字ってものに凄く嫌悪感を覚えてしまうんですよ。アトポスにおける殺人事件部分を書くだけならエリザベート・バートリに関する作中作は要らないとか、あってもいいけどもっと短くてもいいじゃんとか。こういう「無駄」は作品に厚みを持たせる意味で小説にはアリなんですけど、水晶のピラミッドとかアトポスの場合、作品に厚みをもたせてるというより単に本の厚みを増やしてる印象が否めないというか、「長編を書くんだ」という確信犯めいた活字に感じてしまうんですね。もっとひどくいうと、原稿料稼ぎ的な。これに対して京極夏彦作品というのは同じぶ厚いミステリでも、活字に無駄が無いというか、「この事件の真相を説明するにはまずこの説明をしなきゃいけなくて、ここにこう伏線はっとかないと説明にならないから前置きがこうなって」みたいな「みっちり感」があるんですよ私には。これは「アトポス」をくれた某R氏も同感で、「やっぱそうだよな」と盛り上がりました(←数年前ね)。

 私は「占星術殺人事件」は大好きなんですが、あれもはっきりいってXXXに関する部分は実は真相とまるで関係なかったりするんですがあの作品の場合は、その「作品に厚みをもたせるための無駄っぷり」のトータルバランスが絶妙なんですね。あれ以上多すぎると冗長に過ぎる、しかしあれより少ないと感動しない、みたいな。そのバランスがかなり悪いんじゃないかというのがR氏と私の当時(「アトポス」文庫本発売頃)の見解でした。

 で、今回再読してみて思ったのは、「無駄な部分は無駄な部分で確かに無駄ではあるけれどもこれはこれで面白いな」ということ。初読時から年月が経ち、この作品に関して覚えていたのは「最初にエリザベート・バートリに関する長い話があったな」ということくらい。覚えていたということはそれがやっぱり面白かったからで、そして再読時にもやっぱりそこは面白かったのでした(ただ、その部分だけで息切れがしてしまうくらい長いのでバランスが悪いぞと)。

 サロメの台本部分もかなり無駄に長いのですがこれもここまで作りこんでくれると確かに独立してサロメのお話を楽しめるし、イスラエルとパレスチナの説明も小気味良くまとまっていてちょっとした歴史の勉強になります。

 私は推理小説然とした作品が好きなので、といってもじゃあ何が推理小説然としているのかというと人によって定義がまちまちだと思いますが、よーするに、「推理小説を書く事で別の話題や作者の主張を織り込ませる」的なものがあまり好きじゃないんですね、たぶん。いやまてよ、こう書いてみると別に嫌いじゃない気もする。うーん、なんだろ、京極みたいに変な知識満載な内容のミステリは大好きなんですが、島田荘司とはその見せ方が違うんですね。で、島田さんの「作品に対する贅肉の付け方」がイマイチ好きになれない、と。

 と、ここで振り返ってみると「御手洗潔の挨拶」は非常に小気味良くまとまっていて推理小説然としつつ御手洗ワールド、島田ワールドが展開されていて何気に名作だよなぁと思うのでした。

 あ、全然ネタバレな話してないや。えぇと、全く忘れていたような、最初にちょっとだけ出てきたような登場人物が共犯者だったり被害者だったりというのは結構「うぉ」と思いましたね。トリックに関してはやや拍子抜け…。山のセットの上の剣に突き刺さっていた死体の謎も「そんなもんセットが倒れたにきまっとろーがー」ってすぐ分かるし、それをさも超難問であるかのように言う登場人物達がなんか…。あと、これは別に文句じゃないんですが、いや文句と言えばそうなのかもですが、御手洗が出て来るシーンかっこよすぎ(爆)。いくらなんでも白馬って…。

 そういえば、レオナの部屋になったたくさんの人形って、あれも精神科医が持ってきたってわけじゃないですよねぇ? だとするとやっぱりレオナはちょっと…あわわ。

<追記>
 わかった、あれですよ。つまりですね、ある特定の意図を持って書かれているミステリがあんま好きじゃないんですね多分。「目眩」とか「アトポス」って「作者が読者を啓蒙してやろう」という意図を感じるんですよ。社会的医学的な部分で。ミステリにメッセージ性を持たせているというか。綾辻とか京極とかって単純にただのミステリでしょ。もしかしたら、島田作品のそういうところが「ちょっと鼻につく」のかもしれません。まぁ特にあまり意識したことはありませんけど。
posted by SeireiK at 00:36| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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