2012年10月11日

たった一人の帝国

 現在 Youtube の「東映特撮 YouTube Official」において、スーパー戦隊シリーズ第八作目『超電子バイオマン』が週に二話ずつ配信されていますが、いよいよ残り話数も少なくなって参りました。そんな折り、この『超電子バイオマン』という作品、ならびに作品に登場する「ドクターマン」という男について思うところをだらだらと書いてみようかと。

 『超電子バイオマン』放映時リアルタイムで見ていたワタクシ、もはやいいオッサン世代ですがそんなことはさておき、当時は小学校 中〜高学年だったんですね。大体高学年くらいになると特撮ヒーローだとかアニメに関する見方が変わって来るものでして、純粋にヒーローを応援したりしないんです(笑)。ヒーローものを「卒業」する歳になってくると言いますか、クラスでも見ない奴が出てきたり、見ていても「ヒネた」見方をするようになってくるわけです。私も前作の「ダイナマン」で戦隊モノは飽きてきてしまってバイオマンは初回の方を見ていませんでしたが、友達が「とにかくカッコイイよ!(頭の電飾が)」と言うので見てみたんですね。

 そしたら、バイオマンそのものよりも「ジュウオウ」のラブリーさにやられてしまいまして。このブログでも事あるごとにジュウオウについては熱く語っておりますが、ストロング金剛さん演じる「モンスター」と、ジュウオウのパワフルラブリーコンビに心酔致しまして。前述の通り見方にヒネりが入って来る世代でもあったので、もうバイオマンなんか全く応援しないわけです(爆)。ピーボなんてデザインから声から言動から、とにかくやることなすこと大ッ嫌いでしたねぇ(声を演じられた方ごめんなさい)。新帝国ギア万歳、なわけですよ。第三勢力であるところのシルバ & バルジオンのカッコ良さも凄絶でしたし、とにかくバイオマンは嫌いでした。郷史郎が壊れたジュウオウの頭をぶん投げるシーンなんか、本気で彼に殺意が芽生えたものです(しょこたんごめんなさい)。

 ま、思い出話はここまでにして、敵である新帝国ギアと総統ドクターマンについて語りませう。
 あのラブリーなジュウオウを作ったというだけで(設定上)ドクターマン様には当時から好印象を持っていたわけですが、なんと言ってもこのお方、実は バイオマンにたった一人で歯向かっている んですね。一見するとビッグスリーだのジューノイド五獣士(後に三獣士)だの、その他数えきれない程のメカクローンに囲まれて凄く充実した帝国のドンに居座っているように見えますけども、何のことはない、これらの部下は全てドクターマンが作り上げたもの。ぼっちです。思いっきり一人ぼっちです。救いようが無い程ぼっちすぎます。私は『超電子バイオマン』以降の戦隊シリーズ作品は見ていないので断言は出来ませんが、おそらく後にも先にもたった一人で戦隊と戦い、世界征服を実現しようとした敵勢力は彼以外いない、そして今後も現れることはないのではないでしょうか。
 一体どこから資金を調達しているんだ?という疑問は沸きますが、それを置いといても凄すぎます。毎週毎週(?)、新たなメカジャイガンを一人で作り、メカクローンを量産し…部下は対して役に立たない始末。というか彼らの修理もしなくちゃなりません(大体のことはメカクローンによるオートメーション化が成されているのかもですが)。

 ここからちょっと真面目なお話。

 「人形というのは自己の投影である」とよく言われます。一度でも人形やぬいぐるみを愛でたことがある人ならよくわかるように、特に、大事にしている人形に話しかけちゃったりとかしちゃう人なら深く頷いてくださることと思いますが、人形が「喜んでそう」だとか「悲しんでいそう」というのは全て自分の心持ちなんですね。大切にしてると「微笑んでいる気がする」とか、あるいは「今日すげー疲れたよ〜」と話しかけて、「あら〜大変だったのね。お疲れさま〜」等と返事を脳内で妄想するような行為は、ただただ自分が「そう慰めて欲しい」ということの裏返しであり、「そのようなことを言ってくれる人格(キャラクター)」をそのものに期待する行為であります。「この人形はこんなことを言う子であって欲しい」という、自己の願望。
 人形というのは人間や動物(ペット)のように自分の意に背く部分があるわけではありませんから、自分の思い通りの性格を付与して愛でる=妄想することが出来るわけで、だからこそ「自己の投影」と言われるわけであり、また、だからこそ危険なものとして警鐘を鳴らしたり、嫌悪感を抱いたりする人がいるわけです(参考:『ひとでなしの恋』江戸川乱歩 / あるいは、F S S に対する富野由悠季氏の言動(『マモルマニア』))。

 そして、人形同様ロボットもこの危うさを含んでいます。掃除用途や人命救助用途等の非人型ロボット、また人型であっても人間が操作することを前提とした兵器としてのロボットは別ですが、自律型の人型ロボットを作る行為、作りたいという思いは結局のところ「自分が望むとおりの人物像(を投影した物体)」を作りたいという願望が成せるものであって、それは人形を愛でる行為の延長線上にあるものです。
 科学が発達して、完全なる自律型ロボット、自分で考え、自分の意志で喋り、時には人間に逆らい…というロボットが創造されるようになれば話は変わってきますが、悲しいかな現在ではまだまだロボットは人間がプログラミングした通りに動き、反応するものに過ぎません(完全なる自律型ロボットであってもやはり初動段階においてはプログラミングによってある程度性格や行動は制御されるでしょう)。ロボットの個性だの人格だのは全て製作者の手の中にあります。
 (曲がりなりにも自律型ロボットを一体制作している身としては、このことは常に肝に銘じておかなければならないと思っています)

 話を戻して、ドクターマン様。この方の作り上げた帝国はロボット帝国であり、配下は全て made by Dr.man です。あまりにも人間的すぎるビッグスリーや五獣士のせいで、あるいは毎年見ている戦隊シリーズの敵さん達が似通っているせいで他の作品に出て来るのと同じような軍団に錯覚してしまい、彼がたった一人であることに気がつかない、あるいは気がついてもあまり気にならないということがあるのでしょうが、彼は悲しい程に一人きりなんです。だからこそ自分の子供に似せたプリンスというメカ人間を作ってみたり、その自分の弱さを反省して自分自身に施した改造を更に強化してみたり。
 人間的すぎるビッグスリー、と言えば、ビッグスリーがドクターマンに反旗を翻す回もあったりします(主犯はメイスン)。しかし、言ってみれば「反旗を翻しそうな性格」をメイスンにプログラミングしたのもまたドクターマン様であり、だからこそ「お前たちがやりそうなことなどお見通しだっ!」という展開になるわけです。実はファラのことが好きなモンスターもドクターマンがそういう風にプログラミングしたわけで(笑)、「お前の部下思いに免じてジュウオウも改造してやろう」という、感動的なジュウオウとモンスターのコンビ愛もまた、そもそも彼がモンスターを部下思いの性格に作ったからこそなのであります。

 新帝国ギア=ドクターマンの野望は世界征服です。人間(というか日本人)をバンバン殺しちゃうような描写が度々あります。たしか「メカ人間の帝国(世界?)を築き上げる」とかなんとか言ってたような気がします。しかし人類を滅亡(?)させて、あるいは人類を奴隷のようにして、メカによる帝国を築き上げても、自分の配下を全てイエスマン(=ロボット)にしても、それが一体何になるのでしょうか。人間的なビッグスリーやジューノイド達に囲まれていても、彼らは全て自分の作り上げたもの。自分に都合がいいように、自分の望むように作り上げたもの。

 「この世を燃やしたって 一番ダメな自分が残るぜ

 上記、筋肉少女帯『踊るダメ人間』の歌詞のごとく、結局どこまでいっても彼は一人きりなのです。

 いや、彼程の天才がそのくらいのことを理解していなかったとは思えません。にもかかわらず、新帝国を設立し、彼を世界征服に駆り立てたものは一体なんだったのでしょう。征服後の世界に、自分以外はロボットしかいない世界に、彼は一体何を見ていたのでしょう。リアルタイム放映時からこのドクターマンという男には魅力を感じていましたが、年月を経て、歳を重ねてから改めてこの作品を見ると、より一層彼に様々な思いを抱いてしまいます。

 こんなに孤独な悪の首領が他にいる(いた)でしょうか。この悲しすぎる設定に加え、幸田宗丸氏の名演が更に哀愁を誘います。たった一人で世界征服を夢み、バイオマンと闘い続けた、そして「この世で最も愛すべきロボット・ジュウオウを作った偉大な男」として、新帝国ギアの総統ドクターマンは私の中で永遠に輝き続ける、特撮作品『超電子バイオマン』のまぎれも無い 主役 なのです。

 フォア・ザ・マーン!!!



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posted by SeireiK at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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