2007年07月09日

『旧怪談(ふるいかいだん)』レビュー

 豊橋駅ビル(カルミア)の本屋(豊川堂)にて。なんと「邪魅の雫 大磯・平塚地域限定特装版」を発見。これ平塚地方でしか売ってないんじゃないの? なぜ豊橋に???と一瞬ビビり、かつ「プレミア付くかもしれないから買っとくか…」という邪念が沸きましたが(苦笑)、私は通常版の装丁の方が好きですし、結局そこは素通り。

 そしたら、入り口辺りの新刊コーナーに「旧怪談」と「前巷説百物語」が並んでおりまして、「へーこんなの出たんだ」と、つい「旧怪談」を衝動買いしてしまいました。この三作品の中では最も京極臭が薄いことは(前置きをちょっと立ち読みして)わかっていましたが(笑)、あえてこれを。

 この本に「京極夏彦」を(過剰に)期待してはいけません。これは基本的に『耳袋』であり、耳袋の全訳集であると考えた方がいいです。岩波文庫とか講談社学術文庫とか、あの類いの本の全訳を「京極夏彦が書いている」というイメージですね。逆に言えば「耳袋」に関心がある人(かつ京極好き)にとっては結構お買い得。原文が併記されています。私の場合、この「原文併記」が無ければ買ってませんでした。(追記:全訳と書きましたが「耳袋」全話が載っているわけではありません)
 また京極氏執筆部分は比較的活字サイズが大きく、わりとスカスカな印象を受けるのでそう行った意味でも「京極度」の薄い本と言えます。速読が出来ず、ごく一般人並(というか以下)の読書ペースしか持ち合わせていない私でも一日で読破出来た数少ない氏の本です(苦笑)。とはいえ、予想していたよりは意外にボリュームがありました。それと、文章や単語(注釈)がかなり平易に書かれています。小学校高学年であれば充分読めます。これも氏の作品にしては珍しい方かと(笑)。

 内容ですが、「耳袋」(ちょっと軽めの怪談や不思議な話)に興味があって氏の文体が好きな方なら満足できます。そうでないとちょっとツライです(爆)。構成は各話ごとに、「京極氏のつけたタイトル→本文→原文タイトル→原文」となっています。因みに私はあえてこの構成にケチをつけ、「原文→京極氏の訳(本文)→京極氏のつけたタイトル」という順序で読みました。原文のタイトルは原文を読んだ後だったり、京極氏の文を読んだ後だったりまちまちでしたが、要は「先に原文を読む」「タイトルを見てしまうと内容を想像してしまうので初読の楽しみを損ねないように手で隠しながら読む」ということです。原文は、センター試験レベルの古文を読める(ざっと読んで大意がわかる)人ならそれほど苦もなく読めますし、細かい意味や大意がわからなくても後で京極氏の書いた部分を読めばわからなかった部分もわかるわけなので、個人的にはこの順序で読むことをオススメします(というか私はこの順序で読んでよかったと思います)。えらそうに言ってますが、原文を読んで意味や内容が掴めなかった話が私にも相当あります(てへ)。
 原文を先に読むと、「この話あんまり怖くないよなぁ」「これ怪談じゃないよなぁ」という話に対して京極氏がどういう視点から題材を料理していくのかがわかったり、「あぁ、ここに着眼するとこれは怖い話になるのか」と気づかされたりします。そして最後にタイトルを読むことで、「う〜ん、こういうタイトルをつけたか、なるほど」と更に楽しめます。

 そういえば、「うぉ、これは怖い(原文は怖くないけど京極のこの料理の仕方は怖い)」と唸った話が一つあってそれをブログに書くつもりでいたんですが…どれだったか忘れました(爆)。

 最後に細かいことをもう一つ。原文では「〜の誰べえ」と名前が書かれているところを京極氏は全ての話においてばっさり「Aさん」「Uさん」などと表記しています。話によっては普通に名字を使って「誰それさん」とした方がすっきりしたのではないかと思われるところもあったので、そこはちょっとひっかかりました。多分統一性の方を重んじられたのだと思いますが。

(あと、欲を言えば「一冊読み終えた満足感」が薄いんですよね。徐々に盛り上がって行くとか最後の話が特別長くて満腹感があるとかそういうのがないので)
 


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あら、Amazonでも買えるのねこれ…。じゃあプレミア度は薄いですね。
posted by SeireiK at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | BOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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